読者の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。連日の暑さに、「梅雨はどこへ行ったのか」と思わず口にしたくなる日が続いています。今年は日本ミツバチの群れが巣箱に入居し喜んでいましたが、最近は外で夕涼みする様子が目立ち、このまま自然に帰ってしまうのではないかという気配すら感じています。

さて今回は、日本の製品安全評価・認証業務に、国が本格的に関与・指導する姿勢を明確にしたことについてご紹介します。経済産業省は、「新たな基準認証政策の展開-日本型標準加速化モデル 2025-」を公開しました。この中では、「背景」と「新たな取組の必要性・取組方針」が示され、特に特定分野での国主導の戦略的標準化が明記されています。また、国内認証機関の強化の背景として、企業の設計情報やサプライチェーンに関わる機微情報が海外へ流出する懸念があることも指摘されています。

当社は、国内で唯一の民間出身の認証機関として、社員教育の強化に取り組んでいます。特に ISO/IEC 17021:2011(JIS Q 17021:2011)に定められた「知識および技能」に対応した教育体制への見直しを進めています。これは、会社法における「内部統制力」にも通じるものであり、経営者としての責任と認識しています。ただし、近年では厳しい口調での指導が「パワハラ」と捉えられる風潮もあり、経営者として悩ましく感じています。

2022 年 11 月に長岡科学技術大学を修了する際、教授から「今後どう判断していくか」と問われ、「技術者倫理を大切にして判断していきます」と答えたことがあります。その後、倫理観に優れた官僚出身の方が認証機関のトップに就任されたことや、同大学の教授から「経済安全保障の観点で製品安全評価を考えるべき」との助言をいただいたことからも、国が本格的に国内認証機関への関与を強めてくるという私の直感は、今まさに現実になりつつあります。

従来、ISO/IEC 17025 によって試験所が認定され、その後 ISO/IEC 17065 で認証機関としての評価を受ける流れが主でした。しかし今後は、要員の知識・技能に関しても、ISO/IEC 17021 に基づく明確な要求がなされるようになると受け止めています。上記の経済産業省のウェブページには担当者の方の連絡先も掲載されており、これまでの疑問点を整理し、確認する予定です。当社としても、国の方針を的確に捉え、進むべき方向を誤らぬよう努め、後進の育成にも取り組んでまいります。倫理観と専門知識の両方を備えた技術者の育成は、業界全体にとっても不可欠だと考えています。

“認証機関がコンサルティングを行うことはできない”と述べているウェブサイトがありますが、まもなく日本の試験所認定機関グループから指針が出される予定です。私自身は、ISO/IEC 17065:2012 のガイドの編集委員長でもあった故・住本守氏のもと、2 年間の指導を受けてまいりました。特に、同ガイドの 18 ページにある「コンサルティング」に関する項目は、「製品認証の依頼者に対して」コンサルティングは提供できないとされていることをご理解いただければと思います。当社が提供する適否コメントなどは、製造物責任法の観点からも「正当な技術情報の提供」に該当するものであり、責任をもって対応しています。なお、他機関での認証をご希望の場合には、有限会社エーペックス・インターナショナルおよび株式会社コスモス・コーポレイションにおける約 45 年の経験をもとに、適切な技術指導を提供します。

さらに、業界には優秀な技術者が多数いらっしゃいます。在籍しており、私の引退にあたり、そうした方々を対象に「コスモスマイスター証明書」を発行する新サービスを始めます。証明書を取得していただけるまで責任をもって教育を行います。コスモス出身者として活動している方々には上記証明書の提示を要求してください。ご不明な点がございましたら当社までお問い合せください。

民間から手を挙げて設立された国内初の民間 NCB として、今後も皆さまの信頼にお応えできるよう尽力してまいります。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。