九月を迎え、日中にはなお暑さが残るものの、朝夕の風には少しずつ秋の気配が感じられるようになりました。季節の変わり目は体調を崩しやすい時期でもあります。皆さんには健康管理に十分留意し、それぞれの職務に着実に取り組んでいただきたいと思います。

製品安全に携わる私たちには、適用される法令や規格への適合を確実にするとともに、その要求事項がなぜ設けられているのか、どのような事故や危害を防ぐためのものなのかを理解する姿勢が求められます。規格への適合だけで、安全性に関するすべてのリスクを判断できるとは限りません。製品の構造、用途、使用環境等を踏まえ、必要に応じて規格に明示されていないリスクについても考えることが、製品安全に携わる技術者には重要です。

最近公表された浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査に関する事案では、基準地震動の策定に係る不適切な事案を受け、事業者が3号機・4号機の設置変更許可申請等を取り下げることを決定しました。
公表された調査報告書や事業者の説明では、組織風土や業務プロセスを含む課題が示されています。分野や制度は私たちの業務とは異なりますが、安全に関わる仕事に携わる者として、決して無関係な問題ではないと考えます。

安全に関するデータや判断を扱うとき、私たちが向き合うべきものは、期待した結果ではなく、目の前にある事実です。期待と異なるデータや不都合な事実が得られたとしても、それを正面から確認、記録し、必要な対応につなげなければなりません。組織の目標や業務上の事情がある中でも、技術的判断の客観性と公正性を守ること。それが、安全に携わる者に対する社会や顧客からの信頼につながります。

製品安全に携わる技術者の仕事を考えるとき、私は、自分の大切な家族や友人がその製品を使う場面を想像することが大切だと考えています。実際に製品を使用する人の立場から、どのような危害が生じ得るのかを考え、設計、試験、評価及び認証のそれぞれの段階で、客観的な証拠に基づいて判断する。その誠実な仕事の積み重ねが、結果として顧客からの信頼を生み、企業としての信用を支えることになります。

製品の安全は、出荷時に試験へ合格すればそれで終わるものではありません。製品によって条件は異なりますが、使用を続ける中では、繰り返し使用、部品の摩耗、絶縁材料の劣化、熱、湿気、ほこり、振動、予見可能な誤使用など、さまざまな要因が安全性に影響を与える可能性があります。適用される法令、規格、製品の特性等を踏まえ、製品が実際に使用される時間軸の中で、どのようなリスクが生じ得るのかを考える視点を忘れてはなりません。

外観の美しさ、便利な機能、優れた初期性能なども、もちろん製品の大切な価値です。しかし、製品安全に携わる私たちは、それだけで製品を見るわけにはいきません。設計段階では、製品の用途や想定される使用条件を踏まえて必要な安全性を検討し、その根拠を明確にすることが求められます。試験・評価・認証に携わる者も、それぞれに与えられた役割と権限の範囲で、規格要求への適合を客観的に確認するとともに、その判断の根拠となる証拠を適切に残すことが重要です。

当社では、試験結果の数値だけでなく、構造、写真、測定箇所、判断根拠など、技術的判断を後から追跡・確認できる形で証拠を残すことを重視し、その充実に取り組んでいます。当社が「Original Evidence-Based Safety System」と呼ぶこの取組についても、今後さらに実務への定着を図っていきます。

制度や規格、手順がどれほど整備されていても、それを実際の安全につなげるのは、一人ひとりの技術者です。皆さんには、目の前の製品を自分の大切な人が使うものとして見つめ、事実から目をそらさず、客観的な証拠に基づいて判断する姿勢を大切にしていただきたいと思います。

その一つひとつの判断と行動が、製品を使う人の安全を守り、顧客からの信頼を生み、そして私たち自身の仕事への信頼を支えていくものと考えています。